新しい『UFO手帖』のテーマが決まったところで、表紙をどうするかという案件が発生する。
『UFO手帖』の表紙のフォーマットはほぼ決まっている。創刊号から描いてもらっている窪田まみさんオリジナルのイラストレーションをメインとして、誌名と特集タイトルを入るくらいのシンプルなものだ。
今回は「フォーティアンでいこう!」という特集のタイトルと、フォートの言葉"One measures a circle, beginning anywhere."(円はどこから測っても円である)をもじった"One measures fort, beginning anywhere."(どこから始めてもフォート)という英語のサブタイトルを表紙に入れることがあらかじめ決まっていた。なぜそうなったのかは別の機会に。
同人誌で、特集の主旨にあったオリジナルイラストを毎回使えるというのはかなり贅沢なことだ。そして、窪田さんの描き込まれたイラストだけでもクオリティ的には十分もつだろうという安心感もある――にも関わらず毎回毎回悩む悩む。
今回は毎号の表紙デザインをお願いしているデザイナー氏から、表紙イラストのアイデアも考えてみたいという申し出があり、それならと彼と一緒に考えていくことにした。彼とは同じ専門学校に通っていた友人で、仕事も頻繁に一緒にしている。彼の貢献は表紙だけでない。創刊号の全体的なページ・デザインもやってもらっており、そのフォーマットは今もまだ使われている。
今回で7号。これだけ長く使い回しできているのは、それが素晴らしいデザインであることの証明であろう。さらに、この同人誌を『UFO手帖』にしたのも彼のデザイン提案によるところが大きい。僕はそれを略した『UT』を全面に押し出した本にしようと考えていたからだ。デザイナー氏は影の立役者である。
『UFO手帖』はUFOマニアの巣窟でつくられていると考えている方も多いと思うし、それは必ずしも間違いではないが、実はそうではない人も関わっているからこそ、こういう本になっていることを伝えることが、この文書の裏テーマだ。
しかし、デザイナー氏にオカルトの知識はほとんどない。もちろんフォーティアン現象のこともチャールズ・フォートのことも知らない。なので、そのころ彼と二人で定例としていた土曜夜のオンラインミーティングで、ポカンと聞いている彼に延々とフォートやフォーティアン現象について説明し続けたことをおぼえている。
それからしばらくは二人で表紙のアイデアを出し合う感じだったのだが、なかなかコレゾというアイデアに辿り着けなかった。僕はすでにフォートのことを調べすぎて頭がおかしくなっていて、フォーティアン現象のお箱である「蛙降り」にこだわりすぎていた。戦場に蛙の雨を降らせようとか(このイメージは後に文学フリマ限定オビのコピーになる)、どこにどう蛙を降らせたら面白い絵になるかと延々と考えていたように思う。
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そんな時、彼が出してきたのが「いっそフォートさんが降ってくるってのはどうか?」という簡単なスケッチによるアイデアだった。――ありえない。何も知らない人間だから思いつく雑なアイデアだ。最初は素直にそう思った。人間が降ってくるまでは受け入れられるとして、フォート本人が降ってくる、フォートのファフロツキーズ現象とかいくらなんでも……。
このアイデアはモヤモヤしたまま来週の定例に持ち越しとなった。しかし、その1週間の間に、僕の中でこのアイデアは萎むどころか増長し、サムズアップしながらフォートが降ってくるイメージにまでに成長することになった。それはこのころ、死後にいち度だけ妻の元にフォートが舞い戻ったという逸話を知ったことも後押ししていたかもしれない。
これでイケるとデザイナー氏に告げてラフを描いてもらう――。いい。
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つまりこの絵のアイデアはフォートの事をほとんど知らない者が考えたものだ。逆にいえば、僕を含めいろいろ知りすぎているSpファイル友の会(以下、友の会)内部では思い付けなかったアイデアかもしれない。様々な思考が交錯する流れから野蛮に出来てしまったものなので、当然、狙いすましたコンセプトや説明などは存在しない。フォートが残した最後の著書のタイトルである「野蛮な才能(Wild Trants)」という言葉が頭をよぎる。
デザイナー氏に描いてもらったラフは友の会の中では、わりとすんなり受け入れられ、フォートがファフロツキーズしてくるとか前代未聞で世界初なのではないかと盛り上がった。実際そうだろう(笑)
そしてさらに、デザイナー氏のラフを元に窪田さんに様々な要素を追加したラフを起こしてもらい構成を煮詰めていった。曇り空から光が差し込み、その中をフォートが降ってくるというイメージは窪田さんの発案によるものだ。フォートの落下姿勢や着ている服などにも注意を払い、フォートが生きて居る頃にサムズアップする習慣があったのかなんてことも議論になった(フォートが生きていた頃にサムズアップは一般的ではなかったらしいのだが、降ってきているのは現代だからいいだろと押し切るw)。
そして窪田さんの渾身で素晴らしいイラストに仕上げてもらい、このような表紙になったわけである。
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2022-12-09 18:24:34